むし歯の原因を見ることで、予防のためには何をすればいいのかがわかります。糖分の摂取を控える、 一日の間食(飲食)する回数を少なくし、だ液による再石灰化(歯を強くする)時間を長くしましょう。
「歯が痛い」「しみる」などの症状を持つむし歯。お口のなかのむし歯菌が食べものに含まれる糖分をエサにして酸を出し、脱灰し徐々に歯を溶かしていってしまう病気です。
歯の表面では「ミネラルが奪われる(脱灰)」「ミネラルが浸透する(再石灰化)」ということが繰り返し行われています。 脱灰は主にむし歯菌がつくる酸によって起こり、再石灰化は主にだ液によって起こります。 この脱灰と再石灰化のバランスが崩れてしまうことでできてしまうのが、むし歯です。 間食(飲食)の回数が多くなると、むし歯菌が酸を出し続けるため、脱灰の時間が長く続き再石灰化が追いつかずむし歯になってしまうのです。
原因1:むし歯菌
お口のなかにはむし歯菌がすみついています。
原因2:糖分
糖分が多く含まれる食べものを食べると、むし歯菌が酸をつくり出し、歯を溶かしてしまいます。
原因3:だ液量
だ液量が減ってお口のなかが乾くと、むし歯菌が繁殖しやすくなります。
だ液が出ることで(歯と同じ成分のカルシウムやリンにより)再石灰化が促され、歯を守ることにつながります。
原因4:時間の経過
食後30分を経過すると、むし歯菌の働きが活発になります。
むし歯の原因を見ることで、予防のためには何をすればいいのかがわかります。糖分の摂取を控える、 一日の間食(飲食)する回数を少なくし、だ液による再石灰化(歯を強くする)時間を長くしましょう。
【むし歯になりやすい生活習慣】
【むし歯になりにくい生活習慣】
だ液とむし歯には、深い関係があります。だ液は次のような効果を持っているのです。
希釈・洗浄作用
お口のなかの細菌や食べかすを希釈し、洗い流すことで洗浄作用を発揮します。
歯の保護作用
だ液に含まれるたんぱく質が皮膜を形成し、歯を守ってくれます。
歯の再石灰化作用
歯から失われたミネラルを再び浸透させ、むし歯から遠ざけてくれます。
免疫作用
だ液に含まれる免疫がお口のなかの細菌に対して様々な防御作用を示します。
緩衝作用
酸性に偏ったお口のなかの環境を中性に戻す作用があります。
抗菌作用
さまざまな抗菌物質により、細菌の発育を抑制します。
歯の表面やお口のなかを洗浄する効果があります。
お口のなかの酸や中和する効果があります。
歯の溶解を低減させ、エナメル質や象牙質の再石灰化を促す効果があります。
このようにだ液は、むし歯を防ぐためにとても重要な役割を持ちます。だ液は、食べものをよく咬む、口をきちんと閉じるなどの日頃の習慣を見直すことで、分泌量を増やすことができます。ちょっとした意識がむし歯への抵抗力を高めてくれるものと心がけて、毎日を過ごしてみましょう。
進行段階
C0【ごく初期のむし歯】
症状
歯の表面のエナメル質が溶けはじめ、白く濁っている状態。まだ歯に穴はあいておらず、痛みなどの自覚症状はありません。
主な治療法
適切なブラッシングやフッ素塗布で治ることがあります。また、食習慣の見直しやだ液分泌で治ることもあります。
進行段階
C1【エナメル質のむし歯】
症状
エナメル質がさらに溶け、黒ずんでいる状態。冷たいものがしみることがありますが、まだ痛みはありません。
主な治療法
むし歯に冒された部分を削り、レジン(歯科用プラスチック)を詰めて治療します。
進行段階
C2【象牙質のむし歯】
症状
エナメル質の内側にある象牙質までむし歯が進行した状態。冷たいものや甘いものがしみるようになり、ときどき痛むこともあります。
主な治療法
むし歯に冒された部分を削り、レジンやCR(コンポレットレジン)・インレー(詰め物)で補います。
進行段階
C3【神経まで達したむし歯】
症状
神経までむし歯が進行した状態。熱いものがしみるようになるほか、何もしていなくてもズキズキと激しく痛むようになります。
主な治療法
神経を除去し、神経が入っていた管(根管)の内部を消毒して薬剤を詰める根管治療を行い、クラウン(被せ物)を被せます。
進行段階
C4【歯根まで達したむし歯】
症状
歯の大部分が溶けてなくなり、歯根までむし歯に冒された状態。痛みはなくなりますが、歯根部に膿が溜まると再び痛みが出ます。
主な治療法
多くの場合、抜歯が必要です。抜歯後、入れ歯やブリッジ、あるいはインプラントなどで失った歯の機能の回復を図ります。
歯には神経や血管が通っている根管という細い管があり、むし歯が悪化して神経にまで達してしまうと、神経を取り除かなくてはなりません。
そこで行うのが、歯の根の治療「根管治療」です。
根管治療では、神経を取り除いたあとに根管内を洗浄・消毒し、薬剤を詰めて密封します。目に見えない部分の精密な治療になり高度な技術が必要ですが、これを確実に行うことによって、その歯を残せるようなります。「歯の基礎工事」とも呼ばれる、とても重要な治療なのです。
痛みを抑えた治療のために、笑気麻酔や電動注射器を採用しています。
笑気麻酔
恐怖心や不快感といった精神的ストレスから解放する麻酔です。強い鎮静効果がありますが、効果が終わるまでも非常に早く、治療終了後は数分でご帰宅いただけます。
電動注射器
細い針でゆっくりと麻酔液を注入することで、麻酔注射時の痛みを大幅に抑えることに成功した電動注射器です。麻酔時の痛みが苦手という方もご安心ください。
できるだけ痛みを抑え、かつできるだけ神経を残すために――。当院では3種類の抗菌剤を使ってむし歯を無菌化する、3Mix法も採用しています。
痛みや歯を削る量を従来の治療よりも抑えることができ、神経を残せる確率も高い治療です。ご希望の方は、お気軽にご相談ください。もちろん、ご質問だけでも結構です。
むし歯とよく似た自覚症状を持つものに「知覚過敏」があります。これは、主に歯の表面のエナメル質が薄くなることによって歯の神経に刺激が伝わりやすくなっている状態で、冷たいものなどがしみてしまいます。
知覚過敏の多くは「強すぎる歯みがき」「歯ぎしり」「歯周病による歯ぐきのやせ」などが原因になって発症します。一時的な症状で治まることもありますが、痛みがひどい場合にはコーティング剤を塗ったり、原因となる歯ぎしりの治療をしたりするなどして症状の改善を図ります。痛みをがまんせず、一度ご相談ください。
むし歯にならないためには、日頃から食生活や習慣を見直し、問題点を改善していくことが必要です。ちょっとしたことを心がけて、むし歯になりにくい生活をおくりませんか?